第6回アンケート【冬休み、どうします?中嶋さん】より 投票4位:「あ、中嶋さんの実家にご挨拶もしとかないと」「・・・おい」
「……お前は一体、何をバタバタしている」
年の瀬で忙しいのは、どこの家も同じ。 それは、和希にとっても当てはまることだった。
まぁ、彼の場合はベルリバティスクールの理事長でもあり、研究所の所長という役職もこなしながら学生生活も送っているのだから、なおさらだろう。
とはいえ、恋人である中嶋の目から見ても、ここ最近の和希の慌てっぷりは度を越していた。 寮の私室に仕事を持ち帰るのはもちろん、それ以外にも何やら作業ばかりしている。 編み物をしているかと思えば、PCを開いてレターヘッドがどうの、と忙しいことこの上ない。
そんな状態だから、中嶋が和希の部屋に出向くほうが話が早く、バタバタしているのを毎日見るはめになっていた。
「何、って師走は忙しいんですよ」 「それは仕事の話だろうが」 「そんなことありませんって。お歳暮の準備とか、年賀状もあるし」 「秘書に任せればいいだろう」 「仕事関係はそうですけどね。さすがにプライベートは自分でやりますよ」 「プライベート?」 「竜さんとか、そういう身近なところはね」
ずいぶんと気に喰わない名前が和希の口から出てきて、中嶋は微かに眉をひそめる。
自分の知らない和希を知っていて、無条件で信頼されている男。 一生その位置を手に出来ないと分かっているからこそ、腹が立つ。
そんなことぐらいで怒鳴り散らすほど子供にもなりきれず、こっそり怒りを呑み込んだ中嶋だったが、続く和希の言葉に我慢も限界を超えた。
「あ、中嶋さんの実家にご挨拶もしとかないと」 「……おい」 「はい?」 「必要ない。そんなものは」 「えー?だって貴方のことお預かりしてるわけだし、大体、長い付き合いになるんだか…」 「お前が気にするのは、俺だけでいい。他なんか見るな」 「ん、っ」
深く口づけて、中嶋は和希の言葉を封じる。
必要ない。 両親への挨拶なんて。
他なんか気に掛けるな。 俺だけを見ていろ。
両親と言えども、コイツを見せる気なんかサラサラない。 アイツらは、綺麗で可愛くて、骨のあるやつが好きだから、和希なんか一発で気に入られる。 好みが同じだから、良く分かる。
持っていかれるのはごめんだ。
そんな事を思いながら、中嶋は一層深いキスを仕掛けた。
written date 08/01/29 Copyright(C)Aya - +Nakakazu lovelove promotion committee+
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