いくら新年がめでたいと繰り返したところで、昨日の続きの今日に変わりはない。


元日――学園は冬期休暇中で、とりあえず仕事も休み。
やるべきことは山積しているけれど――

『和希様がお休み下さらないと、研究スタッフ、社員、誰ひとり休みを取れません』

温厚な秘書に強く申し渡されては、何も言い返せない。


午前中のうちに実家に顔だけ出すと、押し掛ける親戚連中からの面倒に巻き込まれないよう早々に退散して、
個人的な資産のひとつの、都内のマンションへと戻った。

取り立ててやることもないとなると、あまりにも手持ち無沙汰で時間さえも持て余し気味。
それほど仕事人間という自覚もなく、普段いかに学生生活に忙殺されていたかをつくづく思い知らされる。

もちろんそこにはあの人と過ごす時間も含まれているわけで…

思い出してみれば、あれやこれやと赤面モノのシーンばかり浮かんでくるのだけれど、
その分想いは募る。


…逢いたい。

一度胸に描けば、不思議なほど気持ちが湧き上がる。
同じ空気の下にいるだけでいい。寮の部屋に戻りたい。
ここはどうしようもなく息が詰まる。

あの人がいないというだけで。

そんな想いに我ながら呆れもするし、同時に幸せな自分を見出すこともできる。
毎日違う気持ちで、毎日あの人を想う。
積み重なって今日があるなら、今日は単なる昨日の続きとは違うと言えるのかもしれない。

 ――なーんて…

哲学的な気分に浸りつつ、まどろむ午後。
元日の都心は、不気味な静寂に沈んでいる。


不意に携帯が鳴り出した。

ゆっくりと眼を開ければ――新しい空気の匂い。
待ち焦がれたあの人の、声が聞こえる。





【はっぴーにゅーいやー】
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