24日、寮の食堂で有志が集まり、パーティを開くと聞いた。
有志と言っても、すでに冬期休暇に入っていることや、
センター入試が目前と言うこともあり、参加するのは生徒の1/3ほどらしい。


仕事を早めに切り上げ会場に向かうと、酒もない(ハズ)なのに、
そこはすでに異様な盛り上がりを見せていた。
俊介はタコ焼を積み上げてクロカンブッシュを作り上げ、
成瀬さんはいつものように啓太へのやや行き過ぎたスキンシップで、
隣にいる王様と果てのない言い合いをしている。

篠宮さんも、今日くらいはお説教も控えて…と思いきや、
ハメを外しそうになる生徒に眼を光らせて相変わらず。

華やかな喧騒――いつもの食堂が、どこか別の場所のように感じられて、
しばらく扉近くに佇んで、そんな光景を眺めていた。

嘘、偽りのないエネルギーの塊。
多少の無茶も平気で、くだらないことで憤ってみたり、
些細なことが可笑しくてたまらなかったり。そんな時代がここには満ちている。


「――何をしている?」
「あっ…」

振り返ればそこに。

「入らないのか」
「…何だかちょっと、若さに圧倒されてしまって」

私服の中嶋さんは、いつも見るより少し大人っぽく、眼のやり場に…困る。

「こんなバカ騒ぎも年に一度だ。大目に見てやれ」

つい漏らした本音に、ふっと柔らかな笑みを見せたその人は、自然と肩に腕を回し、
さり気なく輪の中に押し出されて、当然周囲の眼が気になるのだけれど、
やっぱり中嶋さんは意に介そうともせず。


「――そういえば、中嶋さんも遅れてこられたんですか?」
「いや、部屋まで一旦戻っていた。そろそろお前が来る頃だと思って」
「…?」

その辺の適当な椅子に促されて腰掛けると、肩に置かれていた手が背中を回って腰を引き寄せる。

 ――うわ…ッ

中嶋さんは普段から、ベタベタするのを好まない人だから、意外と言うかなんと言うか…
しかもこんな、大勢のいる前で…

「ど…どうしたんですか?中嶋さん」
「何がだ」
「なにがって、その…」

問いかければ、どんな原理か答えの分だけ密着度が増し、
今にもキスされるんじゃないかってくらい目前まで、端正な面が近づいてくる。

「中嶋さ――…」

こんな状況下でも、どうしてこう冷静なんだかこの人は。
そんな風に思ううち、無言のまま眼の前に差し出された、小さな紙袋。
シルバーに柊をあしらったラッピングは、クリスマスカラーと言えなくも…ない…

 ――って、え?

「あの、これ…?」
「気に入らなければ好きにしろ」
「は、ぁ…」

気に入らないんじゃなくって、あの中嶋さんからのものっていうのが…何より…驚きで、
咄嗟に手が出せなかったのだけれど。

「…頂いてもいいんですか? ありがとうございます。でもあの…どうして?」
「どうして? 理由が必要なのか、お前には」
「――いえ、そういう意味では…」

至近距離で迫力満点の中嶋さんは、無益なことを訊くなと微笑う。

「俺が、そうしたいから――に決まっている」

念を押すかのように口唇が近づいて、

「おいお前ら!そんなとこでいちゃいちゃしてねぇで、参加しろ参加ぁ!」

呆れたような丹羽会長の声を、何処か、遠くで聞いた。





【クリスマスには】
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