「昨日は…」 ――神戸に出張だったんですけどね、ハーバーランドのイルミネーションが綺麗でしたよ。 クリスマスにはきっとすごい人出でしょうね。 興味を示してくれるような話題ではないと承知の上で口の端に乗せたのは、言わば土産を渡す際のついで。 相槌さえあるわけでもないが、別に一方的という気はしない。 しれっとした顔をしていても、中嶋さんはちゃんとこっちの話を聞いてくれている。 うっかりしたことは言えないくらいに。多分それなり(?)に。 「…それなら、一緒に行くか。そのうちに」 「は…っ?」 とは言え、聞き慣れない言葉に我が耳を疑う。 「一緒に」? 「行くか」? 「そのうち」?? ありえない… 「――そう言われたら、お前でも喜ぶか?」 「は…えっ、と……?」 なんだやっぱり―― 例の人の悪い笑みと共に、一瞬で期待を覆されても、別にショックは感じない。 むしろどこかホッとしている。 「そう…ですね。冗談だと分かっていても喜びますよきっと。中嶋さんにそう言われれば」 「ふん。俺と一緒なら、どこへ行くのも嬉しいと素直に言ってみろ」 「は?はぁ…」 たまにこうやって人を絶句させる中嶋さんが、妙に可愛くて愛しい。 「ま、そういうことにしておいてあげますよ」 打てば響くように返ってくるのは、柔らかな微笑み。 【ふたりで】 Copyright(c) monjirou +Nakakazu lovelove promotion committee+ |