「中嶋さん中嶋さん、月が、凄く綺麗ですよ、ほら」

ベランダに出て呼ばわると、中の人は面倒臭げに寝台の上で寝返りを打った。

「……別に珍しくもないだろう。楽しいのか?」

満月に少し足りない今宵の月は、瑞々しいオレンジの光で、煌々と辺りを照らしている。

「だって綺麗なものって、気持ちに潤いを与えてくれるじゃないですか。
 空でも海でも…花だって緑だって」

「――なら、俺はもう十分だ」
「えっ…?」

その人は再び寝返りを打つと上掛けにもぐり込んで、それ以上の言葉は聞けない。

「中嶋さん?」

月が、呆ける横顔を眩く照らしている。






【bright moonlight night】
Copyright(c) monjirou

+Nakakazu lovelove promotion committee+

inserted by FC2 system