【※和啓風味の丹羽啓前提な中和】




2次試験前期日程を終えて、あとは卒業式を待つばかりの3年生。
丹羽(前)会長と中嶋さんは揃って雪山へと出かけていった。

「冬山登山ですか?」って訊いたら、
「お前の冗談はやっぱり10年古いな」って笑われてしまった…
その「やっぱり」ってなんだ?

そんな謎はともかく、留守番組の啓太とふたりで学食のランチ。
3年生がいないだけで、食堂は随分と広く感じられる。

「…なぁ、和希」
「ん、なんだ?」
「……中嶋さんってさぁ、王様と仲いいよな」
「――ヤキモチか?啓太」
「違ッ…そんなんじゃないってば…」

揶揄ってみたけれど、啓太の言いたいことはなんとなく理解る。
友情と愛情と、秤にかけたらどっちが重い?ってことなんだろう、きっと。

丹羽会長と中嶋さんの間には、お互い絶対に口には出さないだろうが、
確固たる友情が存在していると思える。
単なる仲のよさを越えた、信頼関係。
啓太がちょっぴり不安になるのも頷けると言うか。

「――なんだよ啓太。啓太には俺がいるだろ? それじゃ不満か?」
「え、そ…そんなこと、ないよ…」

困った顔で笑う啓太には、そんな冗談めかした言葉よりもっと、
言って欲しい気持ちがあるって気づいていても――それを伝えるのはちょっとだけ切ない。
啓太にとって、必要な存在はもう俺じゃなくてあの人なんだなぁって実感してしまうから。

もちろん自分にだって、もうちゃんと大事な存在の人がいる。
それとは別に、割り切れない思いっていうのだろうか、こんな感情は。


「大丈夫だって啓太。王様だってきっと今頃――啓太も連れてくればよかったなんて言ってるって」




「うぉあ〜やっぱ啓太も連れてくりゃよかったなぁ」
「…また来ればいいだけのことだろう」
「そりゃそうだけどよ、今ってのが大事なんだろ、今ってのが!」
「…何が今、だ。四六時中ベタベタとくっついているくせに、よく言う」
「あぁ?お前に言われたくねぇなぁ」
「誰がいつベタベタなどした」
「してるだろーがよ。他人がいようがいまいが、いっつも遠藤の背中にべたーっと張り付いてんのは誰だよ」
「あれはベタベタとは言わない」
「じゃあなんだよ」
「虫除けだ」
「・・・・・・」




「――ッくし…と、ゴメン」
「あれ?和希、もしかして花粉症?」
「いや…違うと思う」

どうも噂されてるっぽい…このカンジ。
合格発表を前に、呑気にボードに行くなんて余裕なふたりも今頃は昼食だろうか。

「…でもさぁ、王様も中嶋さんも薄情だよな。あと少ししか一緒にいられないのにさ」
「まぁ仕方ないだろ。スケジュールの都合もあるだろうし」
「だってあのふたりは大学もおんなじなのに…」

結局憤懣はそこへたどり着くのか、啓太は身を乗り出し、声を潜めた。

「――なぁ和希。理事長権限で、ふたりとも留年させちゃえば?」
「け、啓太…」

それは理事長権限と言うより、ただの職権乱用…


そしてどこかの青空の下では、くしゃみを連発するボーダーがふたり。





【もうすぐ合格発表】
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