些細で盛大な主張
「うわっ!あと5分で授業始まっちゃうよ、和希!」 「早く着替えなきゃな」
週番である和希と啓太は、前の時間に使った生物の標本を戻しに行って教室に帰ってきたばかり。 ただ、次の授業がグラウンドで行われる体育ということで、二人は少しばかり焦っていた。
体育着とジャージに着替えるだけだが、校舎の広いベルリバティにおいて、グラウンドまで行くのに時間が掛かるのだ。 多少遅れても友人たちが先生に理由を話してくれるとは思うが、それでも早めに合流したい。
慌てて二人は制服を脱ぎ始めた・・・のだが、啓太の手が急に止まった。
「啓太?急がないと遅れるぞ?っていうか、顔赤い・・・風邪でも引いたか?」 「違う・・・」 「?じゃあ何だよ」 「和希さ・・・・・着替えるとき気をつけたほうがいいかも」 「え?」
顔を真っ赤にしたまま、啓太は少し俯く。 それを怪訝そうに見つめた和希は、続く言葉に啓太以上の赤い顔を見せた。
「和希、前しかチェックしてないだろ。背中、すごいぞ」 「何が?」 「・・・・・・・・・・キスマーク」 「…・・・・・・・・・・・・えっ!?」 「中嶋さんらしいけど」
和希が見えるところにはついていない、紅い痕。 それが、肩甲骨や腰骨など、背中を余すことなく付けられている。
シャツを脱がなければ見えないキスマーク。 中嶋の所有印は、和希が自分のものだという主張なのだろう。
言うなれば、大浴場やこういう着替えのときに有効なけん制。 些細だけど、中嶋の盛大な主張を無視して和希に手を出す怖いもの知らずはいない。
「かーずき。ほら、早く着て」 「・・・・・・・っ」 「文句は授業終わってから。ね?」
真っ赤になったまま動きを止めた和希に体操着を着せ、啓太は心の中で笑う。 放課後の学生会室は、大変な騒ぎになりそうだ。
written date 07/01/27 Copyright(C)Aya - +Nakakazu lovelove promotion committee+
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